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くらふぁーむの原点

今のくらふぁーむの原点は、南アフリカでの家庭菜園です。

生き物の気配すらなかったお庭を、数年がかりで、美味しい野菜が元気に育つ多様性の宝庫に変身させた経験が、今のくらふぁーむに生きています。

そして、その空間の、何とも言えない居心地の良さも。

全ての生き物が、今をただ生きる、そんな空間との出会いが、私たちの人生を変えました。

理想とかけ離れた、マイホームのお庭

移住して10年ほど経った頃、マイホームを購入しました。

入居当時の小さなお庭は、まるで砂漠のような不毛の土地。

緑あふれるお庭を夢見ていたので、そのギャップは凄まじいものでした。

「いつか自分で野菜を育ててみたい」と考えていた私は、このお庭が持つポテンシャルを信じ、思い描いたイメージを胸に、豊かな空間づくりにのめり込んでいきました。

不毛の庭の改革がもたらした、何層もの豊かさ

まず最初に手掛けたのは、愛猫ユキちゃんのために、日陰をつくってくれる木を植えること。

せっかく植えるならと、鳥の餌になる実をつける木も植えました。

その後、保護猫のマイちゃんが家族に加わり、我が家は一層賑やかに。

お庭を囲む無機質な壁には、つる植物(クリーパー)を這わせ、木や花の成長を見守りながら、複数のレイズドベッドで野菜作りをスタートしました。

気心の知れたお隣さんは、芝生を刈る度に大量の刈草をくれたので、土づくりには自然と草マルチを使っていました。

野菜の収穫が終わっても、急がずゆっくり命のサイクルを全うしてもらい、その時々の様子を楽しみながら、来年用に自分で種採り。

普段目にする機会のない野菜達の花の可憐さに、心から感動したのを、今でも鮮明に覚えています。

お庭でイキイキと育つ植物が増えるにつれ、鳥や虫、昆虫の数や種類も確実に増えていきました。

そんなある日、ミニトマトを見ていたら、カメレオンに遭遇。

野生のカメレオンをこんな間近で見たのは生まれて初めてで、まさに衝撃的な瞬間でした。

ふと周りを見渡すと、私たちのお庭は、何匹ものカメレオンが自然に集まり、住みついてくれる空間になっていました。

カメレオンの目撃情報など皆無の場所だったので、なおさら嬉しかったです。

色々な生き物が集うお庭では、周りが驚くような立派で美味しい野菜ができました。

イキイキ育つ植物と豊かな多様性、どちらが先かは分かりません。

まるでお互いが手を取り合って前進するように、切っても切り離せない関係、と言った方が、しっくりくるような気がします。

失敗から学んだ、無理を強いない空間

お庭は塀で囲まれているため、日当たりがいいところと悪いところ、風通しのいいところと良くないところ、様々でした。

私が植えたい植物が、その場所に合っているとは限りません。

最初は、自分の好き嫌いを優先させて、うまく育たずに枯らせてしまうことも少なくありませんでした。

日当たりが悪く、自分の思い通りのペースで成長しない植物に、ヤキモキしてしまうことも。

失敗を繰り返しながら、自分のニーズばかりではなく、植物のニーズや自分を超えた全体の調和に少しずつ目を向けるようになると、それまでとは違うものが見えてきました。

肩の力も自然と抜けて、もっと穏やかな気持ちで生き物に向き合えるようになりました。

今に生きる、居心地のいい空間

一緒に成長したお庭は、私にとって一番居心地のいい場所になりました。

特に何をするでもなく、ただそこにいるだけで、本当に穏やかで満たされた気持ちになれたんです。

全ての生き物がありのままでいられる空間、片意地を張らず、無理をせず、自然の営みに身を任せ、今をただ生きる空間と言ったら、伝わるでしょうか。

この南アフリカでの経験が、今のくらふぁーむの原点です。

ススキのような草で埋め尽くされた耕作放棄地を見た時、南アフリカの不毛なお庭が重なりました。

「命がつながっていく循環が、豊かさをもたらしてくれる」、アフリカでの経験とそこで得られた確信が心にあります。

そして、豊かな空間で感じられる、何とも言えず穏やかで、満たされた気持ちも。

これからも、くらふぁーむの原点を忘れずに、この大好きな場所で、自然に寄り添った農業に臨みます。

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くらふぁーむの原点
管理人
Shizu
Shizu

米国大学院で修士号を取得(専門は国際政策研究)後、フィリピンや南アフリカで勤務。人生の折り返し地点を迎え、家族で約20年ぶりに日本に移住。

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